山下幸治作品展「光と時間」によせて
滝沢ナオト

金の輝き、きらめきが人の心をとらえ続けてきたのはな
ぜだろう。レアな金属、加工が容易などの価値とは別次
元で、その反射する光は時に天の高みを示し、時に妖し
く人を誘う。古今東西誰もが認める美しさの前に、人は
言葉を失う。
ある種リスキーなこの素材を、あえて用い、現代人とし
ての美的感覚で再構築するという作業を山下幸治氏は行
ってきた。美しいと感じるものたちを、素直に採り入れ
るナイーブさ。柔らかで繊細な感性。
女性や花などの具象画に部分的に差し込まれていた金が、
今回は透明な色彩が揺れる画面の中心で静かな光をたた
えている。一種のイコンのように、存在の神秘に対する
敬虔な思いが表れる。
世界にあふれる美を、自らの美意識で切り取る枠、窓と
してスクエアが繰り返し用いられているが、この金箔部
分の比率に細やかな美感が示される。そしてこの金と色
彩とをつなぐように細く刻まれた線が、シンプルな表現
を作品として成り立たせる生命線となっている。
秋に弥彦の丘で木々の間に鮮やかな色彩を見せた、赤い
箱に金で十二支の古代文字が刻まれた作品も形を変えて
展示される。中国で特別の意味を持つ赤と金が、また新
たな文脈の中でとらえられ表現されるのが楽しみだ。
(新潟日報「あーとぴっくす」掲載) 

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