篠田桃紅作品館3周年記念巡回展によせて
松木志遊宇[篠田桃紅作品館館長]

新潟という地に開館を許された「篠田桃紅作品館」は3
年目を迎えた。その開館の時に桃紅先生から、「海、波、
雪、なつかしく、きびしいもの。それは私の生涯求め続
けてきたもの。長い間、思うともなく思い続けていたこ
とに、あらためて私は気付いた。「松木コレクション」
を今しみじみ見直して、その想いを確かめている」とい
うメッセージを頂き、この想いをしっかりと受け止めて
歩もうと心がけてきた。マンションの一室に設えた小さ
な空間ではあるが、桃紅先生のお墨付きを頂き、世界を
魅了するアート、本物に触れ合える場を届けたい一心の
出発であった。
私にとっての桃紅芸術は、小学生時の憧れから始まった。
後日に実際の作品に出会った衝撃は、筆舌し難い感動で
あった。ぐいぐい吸い込まれ、墨色の美しさ、線と面の
洗練された清々しさを、角度を変えて見続けてきた。今
なお、その魂の底に響く感動は変わることなく、さらに
新たなときめきの世界に包まれている。
人の心をとらえる桃紅芸術は、戦後間もなく43歳で単
身渡米したニューヨークの地で確立したといっていい。
風通しのよい地で、どのジャンルにも属さない篠田桃紅
の「わたしのかたち」といわしめる独自の抽象画は生ま
れた。以来、常に第一線の活躍は世界のファンを魅了し
てやまず、各国に点在する著名な美術館の所蔵はそれを
物語っている。
篠田桃紅は、抽象表現を次のように語る。「抽象は千人
いれば千通りの見方がある。世界の多様な美しさ、人の
豊かな感受性を伝えるのにこんなによい手段はない」と。
95歳を迎え、孤高の人、篠田桃紅が生涯貫いてきた想
いとその芸術性を、これからも受け止めていく作品館で
ありたい。 (新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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