小川宏展『Article print』によせて
瀧澤直人

小川さんは面白い。頭の回転が速く、話し始めると美術
史から現代のアート状況、文化論、世相や社会問題まで
とめどなく溢れ出す。好奇心と行動力は若い人顔負けで
さまざまなものを観て回る。
人間としての幅が作品にも反映する。端正で静謐な木版
画から、ミニマルな幾何学絵画、そしてアートテロリス
トとしてメッセージアートはじめアートの枠を問い直す
ような各種の試みを仕掛けもする。
自意識の垂れ流しでなく自分の立ち位置を客観的に見る
批評性に基く作品は同時に頭でっかちにならず感性のき
らめきを示し、右脳と左脳のバランスがよくとれている。
一見するとアバンギャルドな書のような、墨色のストロ
ーク跡が律動を伴い心地よく余白に映える今回の作品群
は、しかし版として起こされ刷られるという過程を経て、
瞬間の手業が客観的美意識にろ過され定着している複層
性を持つ。
世界に在る美は人が認識してこそアートなのであり、人
の感性と手を通してアートは成り立つ。ひとつひとつ個
別(アーティクル)の版画は、それ自体が美に関する論
説(アーティクル)であり、そしてひとつの商品(アー
ティクル)なのだ。
なんて考え込むと、「ちょっとずれてるなあ」と小川さ
んは笑うのだろうけど。 (新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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