西片亮太 鍛金展「叩(kou)のかたち」によせて
斉藤優介[燕市産業史料館

すべてのカタチは、一枚の金属板を金鎚で叩くことから
始まる。
伝統的な鍛金技法を用いて、ただひたすらに幾万回も叩
くことで、想い描くカタチを作り上げる作業である。鍛
金技法の性質上、作品の製作過程において偶然性が入り
込む余地が少なく、作り手の技量、思想がダイレクトに
作品に反映される。手のひらから全てが始まり、全てが
完結する小さくて大きな世界。だからおもしろい。  
近年彼が深く追い求めるカタチは「金属の表裏を描く螺
旋」自らが追い求める世界を具現化するために、伝統的
な鍛金技法を学び続ける。日々彼の手から生み出される
メビウスの輪のような金属板は、生物細胞の根源である
螺旋構造のDNAのように映り込む。細胞分裂を繰り返
すように、作品は抽象的な複雑さを極め、新作は、いよ
いよ具象化され、実在する生物へと成長した。角となっ
た金属螺旋のカタチは溢れ出る生命力の強さ、みずみず
しさ、そして美しさを反映し、本能的に命のデザインを
追い求めているかのように会場を生気で満たす。一日に
何万、何十万回と金鎚で叩くという作業は、金属に命を
宿すと同等な行為なのだろうと改めて認識する。
しかし、自己の見える範囲で完結する鍛金技法だからこ
そ、挑む領域は限りなく広い。
才気溢れる若き作り手の全身からみなぎるものづくりへ
の真摯な想いと、叩くという行為の連続から生まれるカ
タチは、会場で私たちに何を問いかけるだろうかと楽し
みで仕方がない。(新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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