森山誠個展によせて
ギャラリー mu-an 立見迪子(たつみ・みちこ)

moriyama 『卓上08-1』45.5×37.9

森山誠の絵をはじめて見たとき、ジャコメッティが、パ
リ留学中だった矢内原伊作を描いた「ヤナイハラの肖像
」を、ふと思い出した。そこには、深い孤独感と虚無
感が漂い、われここにありやと反芻する魂の沈黙があっ
た。
森山は札幌市在住の画家である。東京で生まれ、戦時中
に一家は北海道に移住。明治生まれの父親は、小出町出
身(現魚沼市)で青年期に単身上京して以来、故郷とは
疎遠になり、戦後、小出町に再び帰ることはなかった。
戦時中に一度だけ、幼少の森山が父親に連れられてその
地を訪れた時の光景は、朧のまま時が過ぎていった。
「どこから来て、どこに行こうとしているのか」。芸術
家の持つ宿命的な問いかけは、故郷すなわちルーツを見
失った自己の問いかけと重なる。埋め尽くせない時の記
憶に色を置き、纏いつく不安定さと不確かさを広い空間
に放し、自己の行き先と回帰を模索し、無意識から湧き
出るままに描き続けている。それは一方で、現代に生き
る私たちに、見えない先の不安を暗示し予感させる。
広い空間構成を絶えず意識して描くという森山の深層に
潜んだ原風景は、記憶にわずかに残る魚沼の風景と、北
海道の広い荒涼とした大地なのかもしれない。
この3月に、小出町で味噌麹店を営んでいる父親の実家
を探し訪ね、親族との温かな再会ができた。それは夢の
ような喜びだったという。新潟県での個展が、自己回帰
の旅となり、次へ向かう新たな出発になったら嬉しいこ
とだ。 (新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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