前山忠展 〈平面の視界〉に寄せて
前山忠(作家コメント)




ここしばらく立体やインスタレーションの制作が中心で
したが久しぶりにタブロー(平面)での個展となります。
今回は、徹底して〈平面〉にこだわりました。その可能
性を展開する上で、時たま使っていた3Dキャンバスが
打ってつけでした。初めから普通の画用紙やキャンバス
よりかなり「立体的」にできているからです。
これは、薄い紙やキャンバスがその厚みと横から見るこ
とをほとんど考慮しなくてよいことからすれば、むしろ
極端に厚みがある方が平面を扱う際にはそのギャップが
際立ち、平面を考える上で効果的だからです。
平面は、そもそも人間の目に由来する、いわゆる視覚的
な空間です。一方、現実の三次元世界では、平面は歪ん
だり、立体化し、奥行きを持ち、物質的であることが避
けられません。
つまり、絵画で言う「平面」は、平面でない世界を平面
化して見ていることになります。それこそ脳のイマジネ
ーション(想像力)のなせるわざです。その方が、より
自由で明快だ(分かりやすい)からです。
さて、今回の「絵」はご覧のように色は無彩色、形もほ
とんどありません。わずかばかりの明暗の境界か線らし
き痕跡がある程度です。いわば、NOTHING(何も
ない)
絵ということになります。これを空虚で味気ない
と感じるか、それとも表皮という境界の不思議と映るか
は、人それぞれでしょう。
私はどちらかというと、一見何もないかのように見える
ありふれた物や現象にこそ、この世界の深遠なるありの
ままの真実が潜んでいると見ている方です。したがって
普遍的な問題を扱うには、一見〈NOTHING〉が表
現上もシンプルで適していると思っています。

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