小宮美由紀個展によせて
田中幸男[造形作家]

いつもはそのまま入ることのできるL字のギャラリース
ペースが壁、扉によって2つの空間に区切られる。1つ
目は明るく、さらに奥は暗く。
光、土、植物などによって温度、湿度を制御されたかの
ような空間が広がっている。光量の強い対比は一瞬私た
ちの認識を妨げる。繊細な感情の機微は量の大小に捉え
られ、流されてしまいがちである。そんなことも頭をよ
ぎる。
小宮はこれまで平面、立体あるいは無形物といった身の
回りにある素材を吟味、精査しながらユニークかつ大胆
な切り口で発表を続けてきた。今回は会場ごと表現素材
とするインスタレーションでの発表となっている。うか
つにも開廊二年目のギャラリーがリフォームされたのか
と錯覚してしまった。鑑賞者は用意された白い着衣を身
にまとい、奥の暗がりに素足で踏み入れることが要求さ
れている。仕切りを越えてそれぞれの空間を行き来する
中で生まれる全身での体験、各自が持つ個人的な記憶と
の照合の作業がその作品の中核としてすえられている。
明暗という一見明快な対比の背景にはこれまでの彼女の
作品の奥に蠢く繊細かつ大胆な私的風景とも思えるよう
な空間が生成されている。
会期限りで形を失う設置型の個展の宿命として作品の記
録は来場者の記憶にとどまるところに負う。できるだけ
多くの方々が素足の感触で楽しむ展覧会になることを期
待している。(新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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