小春展『冬の薔薇』によせて
豊口協[長岡造形大学理事長]

薔薇の作家“小春”展が開かれる。昨年の会場を訪れた
人たちは、その作品の持つ不思議な美しさと迫力に圧倒
されていたことを思い出す。今回も、ニューヨークから
直接送られて来た作品ばかりで、その期待は大きい。
小春は、東京芸術大学卒業後、1998年にスカラシッ
プ(奨学金)を受け渡米し、以降ニューヨークを制作の
場とする国際的作家の一人である。作品は、日本はもち
ろん在日スウェーデン大使館やネパールのマウンテンミ
ュージアムなど各国に収められているため、多くの国際
人の間で愛され、その評判は高い。
彼女の表現技法は、シルクアクアチント。言い換えれば
版画技法の一種である。モチーフはもちろん、どの作品
も薔薇、しかし単純なばらではない。薔薇を通して、く
り広げられてきた時間を立体的に表現しようと試みる。
ニューヨークは世界を代表する人種のるつぼである。そ
の中に身を置いて展開されてゆく多様な世界を、薔薇と
いう生物(植物)を通して見つめつづけている。
小春は、一輪の薔薇を一人の人間として見ている。叫び、
涙し、笑うその姿を通して、現代社会の息づかいを聞い
ている。薔薇の内面にかくされた妖や怖れを、巨大な宇
宙観として問いかけてくる小春の作品に、観る人たちは
どう答えることができるだろうか。期待される展覧会で
ある。 (新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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