金谷範子展によせて
藤由暁男[福島学院大学教授]

久しぶりにすっきりとした、しかし緊張を求められる展
覧会に出会った。空間構成はさすがで、作家以上に作品
が語りかけてきた。作品はこうあるべきなのだと納得さ
せられる。
白地のフェルトキャンバスに「金谷ブルー」がしみ込ん
で行く。その上に白や金色に輝く線、それは時間を走る
ストロークとなって、飛び出してくる。1メートル幅で
3メートル以上の長さのフェルトが2枚ないし3枚並列
に配置される。それは床から壁に立ち上がるかのように
のび、堅牢な画面はスポットの光をストレートに反射し
ている。
しかしこの作品にはさらなる演出が加えられていた。背
景にある壁の一部が外され、キャンバスの裏側にやわら
かな自然光があたる。その光はキャンバスを透過して色
の持つ特質を押し出してくる。眼前には平面絵画であり
ながら、3D絵画が誕生した瞬間であった。
近年はシリーズ「OverTheGarden」と呼ば
れるように、自宅の庭で制作し、額縁を飛び出した大型
絵画が中心である。その大きな作品は、その大きさ故に
いかに密度の濃い作品に仕上げるかが勝負である。その
為の工夫が面白い。
ある時は自身の饒舌さ以上に、支持体のキャンバスに語
らせる。今回のような樹脂系の不織布であるフェルトで
あったり、荒い布目の麻キャンに確かな支持体を託す。
その上に油絵の具の不自由さを避け、アクリル系絵の具
や塗料といった自由に取り扱うことの出来る素材が縦横
無尽に走り、作家の意図をも超えて濃密な世界を醸し出
す、その絵作りは「瞬間」の勝負となる。とは言ってみ
たが、それは「計算」し尽くされた作家の仕掛けなので
あろう。


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