仲塚庸子展によせて
藤由暁男(福島学院大学名誉教授)

デザイナーでもある仲塚の作品には、画面構成に独自な
スタイルがある。一般的な静物画や風景画では、求心的
バランスを重視したり、安定的な黄金分割など、面や色
彩を中心に構成されることが多い。しかし、仲塚作品は
描く線と残された空間の関係に重きが置かれていた。
発表作品の多くは、あたかも画面の外に磁場があるかの
ように、描かれていた。見えてはいない透視図法の接点
に向かって引かれる線と線、その2本に挟まれた空間の
分量と対角にある形や色面のバランスに意味を見いだし
ていたのだ。
えっ、この何も描かれていない広い空間に、点の一筆で
も置いたら良いのに、と思わせる作品を数多く制作して
きた。だが、見るものは、いつかその空間に引き込まれ、
順化してしまうかのようだ。この表現技法は、三十年以
上の画業経験から得たものである。ただキャンバスの外
にある、目に見えない空間さえ自己のものにしてしまう
あたりは、したたかな画家の証とも言えよう。
ギャラリー空間には、久しぶりにストローク絵画が展示
される。女流画家オキーフと同様に“生命観”を優先した
以前の作品に回帰したかのようにも見受けられる。
しかし、今回のストロークは違っていた。線の導入部に
見られる筆圧の強さや、折り返し交差する激しい接点に
見られる意図的な溜まり。そこには強い意志が潜んでお
り、現在を直視する必要な行為だったのであろう。まさ
に自然の脅威と、その現実を描き込んでいるかのようだ。
いまの心情をストレートに描いた作品は、納得させられ
る。

新潟日報「あーとぴっくす」掲載

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