不思議に引き寄せられた9人
かかわりに距離を経て によせて
滝沢ナオト

ひとは、ひとり、である。このことを前提として、ひと
はかかわりあいながら生きていく。自分を取り巻く外界。
他者。どこまで行っても重なり合えない、そのもどかし
さは、愛おしさと通底する。
老若男女さまざま、表現形態も多様な9人。皆が知己で
はないけれど、それぞれのかかわりが不思議な糸のよう
に編み上げられ引き寄せられこうして集まってきた。そ
の幸せな場としてこのギャラリーがある。
微妙な色彩を和紙に刷り端正な立方体に仕上げる岡谷敦
魚。シンプルな線と色で構成した画面をプリントで展開
する小木曽淳。精密に仕上げられた箱の中に広大な世界
を創出するコイズミアヤ。版で鮮やかな薔薇を咲かせ海
外でも高く評価される小春。モダンな柄と色のリズムが
心地よいテキスタイルの鈴木均治。絶妙な筆のストロー
クがさまざまな映像を呼び起こす仲塚庸子。生物のシル
エットを染め抜いた画面の空間が美しいはい蓜島伸彦。
幾何学的シルクスクリーンや自らの記憶を各種素材で構
成したボックスを造り上げる舟見倹二。文字も含めた画
像をデザインとして構築しいろいろな媒体で表現する矢
尾板和宣。それぞれの仕事の一端を上げただけでも、今
回の展示が何とも楽しみになる。
手法も形式もさまざまだが、自らの内的な感覚を表出す
るにあたり、いずれも対象への接し方、媒体の扱い方が
熟考され洗練されている。この距離感が表現の質を高め
ている。作品を生み出すまでに、削ぎ落とされ研ぎ澄ま
されていく幾重もの過程があることを思う。
かくして、作者がかかわっていくその世界の広がりの中
に、観る者たちもまた包み込まれていく余地が生まれる。
ひとりのひととして在ることの意味。かかわりの中で生
きていくことの不思議さ、尊さ。さまざまな想念を喚起
してくれる、得難い機会である。


新潟日報「あーとぴっくす」掲載

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