玉川勝之展『パースオヴパースンズ』によせて
星野健司(彫刻家)

金属造形作家の玉川勝之氏(S34年加茂市生まれ)の
個展が長岡のギャラリーmu・anで開催される。筆者
は鉄やステンレスで彫刻を作っているので、いつも氏の
鍛造作品に注目している。
今回の個展タイトルにもなっている『パースオヴパース
ンズ』というレリーフがある。一枚つなぎの銅板(1・
6╳1m)を15に区画し、中に人の顔や旨や尻といっ
た部分を打ち出し、標本のごとく並べた作品だ。
また『defensedefense』(1╳1m)と
題された作品は女性のしゃがんだ半身が後ろ向きに(つ
まりお尻のほうを)ぬっと、見ているものに突出してく
る。前掲作品同様これも細かい方形区画が全面に施され
ていて標本箱というよりはむしろ鉄格子を透かして見た
ヌードといった趣だ。
玉川氏は伝統的な金属鍛造の、いわば超絶技工の職人で
ある。だから、これくらいの造形は意のままなのだろう。
しかし、ここには伝統工芸の「世界」や「情緒」を感じ
させるものは微塵も無い。銅板に取り込まれ、封印され
た人体各部。発散するエロチシズム。存在のアイロニー。
醒めたユーモア。作品はまるで現代美術のオブジェのよ
うにクールに底光りしている。玉川氏は新潟の美術状況
を、このコンセプションと技巧の挑発的な乖離によって、
揺り動かそうとしているかのようだ。彼は「危険な越境
者」なのだ。
(新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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