小林誠 長岡造形大学退任記念展
-ジュエリーの旋律- によせて
上山良子(長岡造形大学学長)

ジュエリーに隠蔽されたダイナミックな小林の世界。あ
の小さなオブジェの持つパワーの源を探った。小林は芸
大の鍛金を専攻していた時代「金槌と地金の関係を体得
しなければモノはつくれない」と徹底した槌打の繰り返
しで体得した技量をベースとして、真剣な金属との対話
をとおして、独特の粘り強さであの独自性を構築してき
たのだった。
「金属そのものが好奇心の対象、奥深い材料」という小
林の金属への情念は材料の物理性、化学性をとらえた上
で彼の感性によって高次元の形となってこの世に創出さ
れている。それは洗礼された形であり、思わず身につけ
たいという衝動にかられるのは世の女性のさがである。
ジュエリーと自分との関係性の中で持てる高揚感は時空
を超える。小林のジュエリーの高い精神性は彼の持つ人
への深い愛情から生み出されている。
長岡造形大学の創立期を支えた教授としての小林は、学
部生だけでなく、小林を慕って大学院へ進み、若き作家
として巣立っていった学生たちの独特の個性を育ててき
た。当大学の工房での彼の16年の厳しくも暖かい指導
はこの春終焉する。忙しい真最中でも誰をも暖かく迎え
るあの余裕の笑顔が懐かしい。
作家としての小林は、江戸期の「工芸のこころ」に示唆
をうけたという円熟期に入り、究極の美への更なる深化
へ向かうことであろう。小林の手先から打ち出される漆
黒の金属、渋くソフトなゴールド、瀟洒なダイアモンド
とのハーモニー。小さなオブジェに何層にも込められた
素材への情念と美しさへの感性の一期一会が、見る人の
人生の心のジュエリーの一つに加わるに違いない。
(新潟日報「あーとぴっくす」掲載) 

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