色使いと色彩が奏でる空間 ─ 田中幸男展によせて
山下幸治(やました・こうじ)
[アート作家]

 『BREATH』

最初に感じるのは、心地よいストローク。そのストロー
クがリズミカルに踊り、豊かな重なりを生み、かすれを
生む。
これまで、田中幸男氏の作品をいろいろな場面で拝見し
てきたが、特に最近は、流れるストロークを存分に楽し
んでいるような気がする。これも、以前の作品より形態
の固さが消え、より自由度が増しているからではないだ
ろうか。また、透明水彩の作品を多く目にするようにな
ったことも、その要因となっているように感じる。
ゆったりとしたストロークと、色彩。そのハーモニーは、
透明な空間を演出している。ストロークに奥行きを与え
ているのは、田中氏の豊かな色彩感覚である。
例えば、暖色系の淡い色彩が、全体をまとめ、余白の白
との空間を感じながら表現しているものなど、その様子
がうかがえる。さらに、墨を表現の中に入れることによ
り、新たな空間と透明感を与えている作品も垣間見える。
ストロークの合間に見える、空間。この空間が、田中氏
の持ち味であり、追求する表現の根幹をなしているよう
に思える。
今回の展覧会ではどのような空間を表現し、どのように
色彩を織り交ぜながら追求した表現をわれわれに見せて
くれるだろうか。新たな表現の変化と、追求する空間の
世界を楽しませてくれることを期待したい。そして、ス
トロークと色彩の自由なハーモニーを作品を前にして堪
能したい。 (新潟日報「あーとぴっくす」掲載)

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