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2009nagase長瀬公彦展 ”ゼロの奇蹟”

2009年6月20日(土)―28日(日) 10:00〜18:00
会期中無休, 最終日は17:00まで.

◆ 長瀬公彦展によせて〜「ゼロの奇蹟」の軌跡
矢部克已|ファッションジャーナリスト, 星美学園短期大学特別講師 


携帯電話やPC・・・。それらを介して世界とコミュニケーションを繋ぐインターネットは、すでに日常になくてはならない装置となっている。別段、環境の進化を否定するわけではないが、長瀬の作品には、やはり大きなパラダイムシフトを直視した現代の批判が込められている。
では、長瀬は現実から離れた清貧を追究しているかというと、決してそうではない。むしろ、デジタル化したいまの社会に自分が参加できる範囲で享受している。デジタルの基礎的な数値「0」を、長瀬が作品のモチーフとして選んだ理由は、身近な生活に押し寄せる圧倒的なデジタルの力の結果ではないかと、私はみている。意識や無意識に関わらず、「0」に触発された背景には、造形的なフォルムとしての可能性も秘めているだろうし、虚無の世界から何かが創り出される、静かではあるが、やがて大きくなるエネルギーを感じているのではないか。
新聞の折り込みチラシなどのフォントから「0」を抽出して、執拗なまでに貼り重ねる行為。肌感覚でしか伝わらない長瀬の身体的な記憶を呼び起こすものといえる。いまでは否定的な意味が強い、「捏ねくり返す」「やり直す」……ことを、時間の浪費を惜しまずに、おそらく迷いながらキャンバスに定着させているのだろう。手を使って、できる限りの感覚をその指先に伝える。
多くの作品に見られる「粗と密」の構図は、コンピュータ社会が生んだ、人間関係そのものを俯瞰しているように思えてならない。

新潟日報「あーとぴっくす」掲載