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2007kumai開廊記念企画 熊井恭子展「草莽の風 -Blowing in the Wind-」

2007年10月6日(土)-18日(木) 10:00~18:00
会期中無休, 最終日は16:00まで.

◆ 熊井恭子展「草莽の風」によせて
北川フラム|アートディレクター 


繊維は空気を孕んで息づく。私たちの肺、魚だった頃の空気袋の記憶を裡に含んで、その膨らみは生命の響きと伝えてくれる。空気を包むには皮膜がふさわしい。やがてそれは植物繊維にとってかわられるが、いずれにせよ、有機物質がもつ人との相性のよさは相変わらずだった。そんな人と繊維の永いあいだの密月に熊井恭子さんは衝撃的な一針を打ち込んで登場した。キラキラと局所で光る金属繊維が空気を包んでやさしく美しく光ることができるのだろうか?という危惧を見事に吹き飛ばして、氏の作品は現代の皮膜として大きく豊かに存在した。
床から立ち上がるステンレススティールの繊維は、やがて継ぎ目のない一枚布となって壁にかかり、ついに繊維は球の構造でありながら皮膜であるという、1994年の恵比寿ガーデンプレイスロビーにある大作品に結晶する。その何の飾りもない金属片の球体の構成は、10年以上たった今でも空間に息づき、その格の凄さを見せつけてくれている。       
熊井さんを知ったのは30年以上も前のことだ。豊後の女性だと思っていたら、或る日「私は長岡に居るの」とおっしゃる。あの縄文の火焔土器の故地である。その連想で言えば、日本近世絵画史の碩学、辻維雄氏が日本美術史を書かれ、そのなかで日本美術の特徴を3つあげられておられる。「アミニズム、遊び、部分へのこだわり」。これは今までの日本美術で言われてきた、わび、さび、幽玄、とはまるっきり違っている。それは火焔土器そのものではないか。そしてその特徴は熊井恭子その人の作品がもつ特徴だった。 
氏が意識してはずしてきたもの。情緒、もののあはれ、~らしさ等。本居宣長以来、小林秀雄にいきつくまでの小説らしさ、情感、もののあはれは、ここではっきりと絢爛豪華な装飾古墳、奈良六大寺の諸像とつながり、更に漱石のもつさっぱりとした構造を享けついでいるように思われる。日本文化のもつ素材の強さ、そこにかかわる硬質な意志。美術に新しい伝統が蘇っている。

新潟日報文化面 掲載
 


熊井恭子 作家本人コメント

素材が技術を生み、
技術がイメージを喚起する。
そのイメージが更なる技術を生み・・・
細い線が規則正しく並ぶさま、
美しい曲線を描くさま 、
スポンジ状に構築されるさまは
私に、生命体の細胞の成り立ちを想わせる。

私の作品の一つ一つは、
私という生命体が記憶する
40億年の生命の旅の懐かしい情景を
表現したものに他ならない。
 

熊井恭子展によせて 立見迪子|gallery mu·an 

風が吹く。
大地をそうなべて 喜びと悲しみの詩を内包し
太古から風が吹いている。
永遠という大河の流れに 蒼々と風は吹く。